父のお見舞い〜その④ 孫と最後に会った日の事
毎回父へのお見舞いは母と2人で行っていましたが、息子達にも声をかけ休みを合わせて4人でお見舞いへ。
父が入院してから家にひとりぼっちの母は、不安からか元気がなくなっていました。
食は細くなったとはいえ、父がいれば少しでも多く食べさせたい一心で食事の支度をしたり、身の回りの世話を焼いたりと張り合いがあったのかもしれません。
そんな両親を元気付けたかったから…
久しぶりに孫の顔を見た母は満面の笑みをこぼし、
息子達も同様でニコニコ顔。連れてきて良かった〜。
でも、父(おじいちゃん)の姿を見た長男の目にはうっすらと涙が浮かんでいて、次男も悲しそうな笑みを漏らしていました。
息子達が小さい頃から共働きだったので、実家へはしょっ中行っていたせいもあり、2人とも祖父母になついていました。
でも、今、目の前にいるのは、数えきれないくらいおばあちゃんと一緒にあちこち連れて行ってくれたり、色んなものを買ってくれたり、PCを教えてくれたり、美味しいものを食べさせてくれた元気なおじいちゃんではなかったから。
入院する数年前、本を出したりセミナーを開いたりするほど投資家として成功していた父が全ての仕事を終了し、自分の財布を振って、
『これがおじいちゃんの手持ちの全財産。お前たちにあげるから2人で分けなさい。ほら、もう空っぽ〜。』
そう言って最後の所持金を孫に渡すのを見ながら皆で笑ったっけなぁ。
医師からは、
『点滴のみで体力が落ちてきているので、夏は越せないかもしれません。念のため、覚悟をしていてください。』
と告げられていました。
ショックで絶対に受け入れたくない想い99%。
でも、1%だけ心の片隅に覚悟。
そして、息子達にもこの事を伝えていたのでそれぞれに祖父への想いがこのお見舞いの時間の中にあったんだと思います。
母の問いかけに、
『わかるよ。』
父は孫たちの名前を呼んで微笑んでいました。
たった2人だけの孫の顔を優しい目で見つめながら…
可愛い孫に逢わせてあげられて良かった。
これも私が出来る悪あがきのひとつでした。