相棒に言われたこと
相棒が迎えに来てくれた。
接触事故が発生して1時間半〜2時間後だったかな?
現場検証・保険屋への連絡等は終わっていた。
そして、母への連絡も。
バンパーが外れ車をレッカーされたから、この日実家へは行けなかった。
母にも車の修理が終わるまで行けないと告げたけど、
『こっちのことは気にしなくていいから』
と、私が無事で何よりと心底ホッとしている様子で、あんなに気弱だった母に昔の強さを感じた。
疲労とショックで吐き気がした。
またやる事が増えた煩わしさで気が重い。
相棒が
『まぁ、ゆっくり何か食べよう』と言ってくれた。
接触事故の経緯を一通り話し終えると相棒が言った。
『ずっと思ってたことなんだけどさ』…
・相棒から見た私は、真面目で自分のことより人のことばかり考えてしまうお人好し。
・人の為に何かをすることは悪い事ではないけれど、私の場合は度を超えている。
・やらなきゃならない事があるのは仕方ないが、もう少し自分が楽しいと感じたり、好きな事をする時間をもっても良いし、手を抜いても良い。
という事だった。
この時の私には理解できなかった。
母を放っておくなんて考えられなかった。
長年連れ添った夫との別れで悲しんでる母の事を思うと、楽しむ事に罪悪感があったから。
それに、仕事も与えられた仕事以上の結果を出したかったから手を抜くなんてできなかった。
幸い、息子達は状況を理解して私に文句を言わないでいたくれた。強いて言えば、冷食パスタのチョイスが良くない事くらいかな?
相棒もそんな私をそっと支えてくれていたんだ。
そう言えば、事あるごとに言われてたっけ。
『そんなに色んなことを一生懸命しなくてもいいと思うし、一人で抱えず人に頼ってもいいんだよ。』
とか、
『お母さんのことだって今日明日でどうなる事じゃないだろ。疲れてたら行けないって言っていいんじゃないか?』と。
そしてこの日、相棒に言われて理解不能で、でも今でも胸の奥に残ってる言葉。もちろん今は理解できている言葉。
『これから話すことは信じるも信じないもEmiの好きにしていいからな。』と前置きをして話し出した。
『俺、思うんだけど、お父さんが接触事故をわざと起こさせたのかもな。そうでもしないとEmiの勢いは止まらないから。これが実家へ向かう国道での事故だったら大変な事になってたかもしれないんだぞ。大事故になっていたかもしれない。お母さんの事を大事に思うのは悪いことじゃない。でも、もう少し自分を大切にしろよ。』
いつもいつも優しい相棒の口調が少しだけ強かった。