母の引越し その2
夜が明けた。
朝8時に引越し屋さんが見えるので、昨夜のようにこの家とお別れの余韻に浸っている余裕はなかった。
さすが母‼️
もう80を超えているのに夫の4度の転勤で手慣れていて手際が良い。
ランチパックを食べ…
あっという間に引越し屋さんが来て、どんどん積み荷をし、部屋の中はガランとした。
『こんな所に部屋のスイッチがあったんだ』
『こんな所にコンセントがあったんだ』
なんて言いながら運ばれた家具の裏を母と掃除した。
あれだけ処分したのに、引越しトラックはパンパン。私の車にも乗り切らなかったものは、駐車場に置いていくことにした。後から、引越し屋さんが処分してくれるらしい。
不動産屋さんも来た。
家の鍵を渡し、この家の後のことはお任せした。
外に出ると不動産屋さんが鍵を閉め、門を閉め、売家の看板を立てた。
私の体の奥の方から、グッと何かが込み上げてくる。
いよいよこの家とも本当にお別れなんだ…
不動産屋さんに挨拶をして、母と車に乗り込む前に思い出がたくさん詰まった家に心の中でお礼を言った。
『長い間、本当にありがとうございました。良い人に住んでもらえるといいね』